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下肢静脈瘤を放置するとどうなるか
早期治療が重要な病気である下肢静脈瘤。何もせず放置しておくとどうなるのかについて解説します。
下肢静脈瘤は静脈にある血流の逆流を防ぐ弁が壊れることやふくらはぎの筋力が弱まることが原因で起こる病気なので、放置して自然に改善したり治ったりすることはなく、だんだん悪化していきます。
ただ、治療で改善する病気なので、むくみ、痛み、だるい、血管が浮き出るなどの症状があったら、まず専門家による診察を受けましょう。
下肢静脈瘤の進行の速さ
比較的ゆっくりと進行する病気ですが、1日中立ちっぱなしの仕事である理容師、美容師、看護師、調理師、教師などの場合は進行が速い傾向にあります。
血管は加齢によって弱くなるので、加齢とともに静脈瘤の進行ペースも上がっていきます。
一方、下肢静脈瘤は妊娠中にできやすいとされていますが、多くは産後数か月で自然に消えていきます。
最悪の場合どうなるか
下肢静脈瘤は命にかかわるような病気ではないので、軽く考えて放置する人が多いようですが、進行していくと皮膚に湿疹や色素沈着、潰瘍などの症状を起こすことがあります。特に重度な潰瘍ができた場合は、感染症や出血を起こすこともあるため注意が必要です。
血管の病気なので、重症になると足が壊死して切断することになるのでは?と心配する人もいるようですが、そういうことはほとんどありません。
また、血栓が肺動脈を塞いでしまい死亡することもある肺塞栓症に、下肢静脈瘤が影響を与えていることもありますが、めったにおきることはありません。
ただし、下肢静脈瘤になると脚に血が滞って深部静脈に血栓ができやすくなり、血栓が肺に飛んでいってエコノミー症候群の原因になることも。
これを防ぐためには適度な水分補給をする、座りっぱなしや立ちっぱなしを避けて軽い運動を取り入れるなど注意することが重要です。
下肢静脈瘤と血栓性静脈炎の関係
血栓性静脈炎とは
下肢静脈瘤の方の場合、静脈瘤の中にある血液が固まり血栓となり、この血栓が炎症を起こしてしまうことがあります。これが血栓性静脈炎です。
そもそも血栓性静脈炎とは、正常な静脈に血栓が生じて患部に痛み、腫れ、発赤などの症状を引き起こす病気です。
生命に問題がある病気ではありませんが、炎症を引き起こしているため、痛みや腫れが見られ、触るだけでもひどく痛みます。
血栓性静脈炎が起こるのは、体の表面に近い場所にある静脈です。
血栓性静脈炎の治療
通常は、鎮痛剤を投与したり患部を温めたりすれば、数週間で症状が改善されます。
また、なにもしなくても炎症は和らぐことがありますが、静脈瘤が原因となっているため、再発するリスクは高いといわれています。
もしも下肢静脈瘤から血栓性静脈炎になった場合には、レーザー治療などの下肢静脈瘤の根本的な治療することが必要となるでしょう。
また、血栓性静脈炎自体は、命に危険がないものの、深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症が併発されることもあるので、自己判断は禁物です。
深部静脈血栓症とは、血栓性静脈炎が体の表面に近い場所にできる炎症であるのに対し、もっと深い部分の静脈に血栓ができてしまう病気です。そして、血栓が肺に飛んでいくと肺血栓塞栓症を発症します。
深部静脈血栓症は命に関わる病気です。こうした病気のリスクがあるからこそ、血栓性静脈炎が疑われる症状が現れた場合には早めに医師に診てもらいましょう。
血栓性静脈炎を予防するには
血栓性静脈炎を予防するためには、血栓ができにくくするために長時間足を動かさずにいるようなことがないように、適度に歩行や足の運動をするといいでしょう。
なかなか運動が難しいという方でも、足を曲げ伸ばしするだけでも違います。
また、下肢静脈瘤を放置していれば、もちろん血栓性静脈炎になるリスクが高まります。
日常生活の改善や弾性ストッキングの着用など下肢静脈瘤の程度や症状に合わせた治療を行いましょう。
また、血栓性静脈炎に何度もなるようなら、医師と相談して手術などの治療法も選択肢として考えましょう。
下肢静脈瘤と皮膚炎の関係
下肢静脈瘤が重症化すると皮膚炎になる
下肢静脈瘤が重症化すると、うっ滞性皮膚炎と呼ばれる皮膚炎を合併することがあります。うっ滞性皮膚炎とは、主にふくらはぎに慢性的なむくみが生じることで皮膚に炎症が生じる病気です。
下肢静脈瘤によって血液が静脈の中をきちんと流れなくなると、血液中の水分が血管の外に少しずつ漏れ出し、むくみを引き起こします。その結果、うっ滞性皮膚炎を発症することがあるのです。
うっ滞性皮膚炎を発症すると、患部のかゆみや色素沈着、発疹が生じ、皮膚のバリア機能が低下するため細菌感染を引き起こしやすくなります。さらに重症化すると患部の皮膚に潰瘍ができることもあります。
皮膚炎が悪化すると潰瘍になることも
下肢静脈瘤によるうっ滞性皮膚炎が重症化すると脂肪皮膚硬化症という病気を発症することがあります。脂肪皮膚硬化症は皮下脂肪が固くなる病気ですが、重症化すると潰瘍を形成するようになるため注意が必要です。
皮膚にできた潰瘍は、治って、またできてを繰り返すと、皮膚が硬くなり少し触っただけでも痛みを感じるようになります。
そうなると、歩くことも辛くなり、高齢の方の場合寝たきりになってしまうこともありえます。
皮膚炎は、下肢静脈瘤が悪化した状態ですから、そうならないためにも下肢静脈瘤になったら早めに治療をすることが肝心です。
下肢静脈瘤で皮膚炎ができた場合の治療
下肢静脈瘤から皮膚炎ができてしまった場合には、炎症を鎮めるためにステロイドの塗り薬を使用したり、症状が進行しないように弾性ストッキングの着用など下肢静脈瘤の治療も必要となります。
場合によっては外科的な治療も視野に入れる必要があるでしょう。
記事監修医師紹介
成田亜希子 医師

- 専門とする科目:日本内科学会、日本公衆衛生学会、日本感染症学会、日本結核病学会、日本健康教育学会所属
- 経歴:弘前大学医学部卒
- プロフィール:東京都出身。国立医療科学院や結核研究所で研修を積み、保健所勤務経験から感染症、医療行政に詳しい。
※学術部分のみの監修となり、医師が具体的なクリニックや施術や商品等を推奨しているものではございません。