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下肢静脈瘤の痛み

こむら返り、血管拡張、血管炎、浮腫など、下肢静脈瘤に伴う痛みの原因について解説します。

下肢静脈瘤の可能性が高いといわれる症状には、足の静脈や毛細血管が浮き出る、浮き出た静脈が痛いといったものがあります。

目 次

下肢静脈瘤の痛みの原因

こむら返り

下肢静脈瘤で感じる痛みの一つとして挙げられるのが「こむら返り」のような筋肉の痙攣による痛みです。

夜、こむら返りによる痛みを訴える下肢静脈瘤患者の方は少なくありません。こむら返りによる痛みは、下肢静脈瘤の治療で軽減させることができます。

治療後の症状の改善状況を調べた研究では、こむら返りは約90%の患者さんが改善したと回答していたことも報告されています。

1.治療成績の比較検討 EV 群の術前自覚症状(主訴)は下腿疼痛(鈍痛)73.4%(200/273), 腫 脹 73.4 %(200/273), 夜 間 の 腓 腹 部 痙 攣41.8%(114/273),掻痒感,皮膚炎 36.7%(100/273),色素沈着 19%(51/273),血栓性静脈炎 6.3%(17/273)であった。

術後 1 カ月において,術前の自覚症状(主訴)の軽快は 94.3%(257/273)で確認され,各々の自覚症状の改善率は下腿鈍痛 93%(186/200),腫脹 88%(176/200),夜間の腓腹部痙攣 91.2%(104/114),掻痒感 91%(91/100),色素沈着 70.6%(36/51),血栓性静脈炎 100%(17/17)であり,いずれも術前と比較して有意に改善し,術後良好な結果が得られた

この研究では、治療前にこむらがえりを訴えていた方が、患者さんの5割に上っていたことも報告されています。

痛みを伴うこむら返りは、よく見られる痛みの原因となる下肢静脈瘤の症状なのです。

血管拡張

下肢静脈瘤では、血管内に血液が溜まり、血管が押し広げられるような状態(血管拡張)になることが原因で、痛みを生じることもあります。

これは、血管の周りに走っている知覚神経が、血管の拡張と同時に引きのばされて刺激が与えられることが直接的な痛みの要因です。

血管拡張を改善してあげれば、痛みも改善します。血管拡張による痛みを軽減するための治療には、下肢静脈瘤硬化療法や、レーザー治療などが行われます。

下肢静脈瘤硬化療法とは、静脈瘤ができている血管内に硬化剤を注入して、静脈瘤を閉じさせる治療方法です。

再発率は他の治療法と比べて高いケースもあるものの、簡単にできる治療法で、治療費用も安く、保険適用もされる治療方法です。

下肢静脈瘤硬化療法 下肢静脈瘤内に硬化剤を入れて,静脈瘤を閉塞させ,静脈瘤が線維化消失することを期待した医療コストが少ない方法である.

硬化剤として当初高張食塩水が使用されていたが,界面活性剤であるポリドカノールが保険適応されるようになり,術後疼痛の軽減がなされ,さらにポリドカノールの効果を高めるために硬化剤に空気を混ぜた(硬化剤 1 に対して空気 3~5)泡状硬化剤が使用されるようになっている

また、2011年から保険適用になっているレーザー焼灼術も、血管内にカテーテルを留置してレーザーで熱を発生させ、静脈を収縮・閉じさせる治療法で血管拡張に効果があるとされています。

血管内に留置したカテーテルより発する熱にて静脈を収縮,閉塞させる治療である.

熱源はレーザーとラジオ波があり,レーザーはヘモグロビンにより吸収される低波長から水により吸収される高波長のレーザーに移行し,ラジオ波はより広い範囲を一度に焼灼できるようになり,術後の疼痛も従来の手術より少なくなっている

むくみ(浮腫)

足のむくみは、痛みだけでなく、倦怠感やだるさを生じさせる症状です。

下肢静脈瘤は血管の逆流弁がうまく機能しなくなり、静脈を通って血液が心臓に戻る働きが弱まることで発症します。そのため、足部分に血液が溜まりやすくなるためむくみが生じることも少なくありません。

弾性ストッキングや、下肢静脈瘤の治療としてレーザー焼灼術や硬化療法などをすれば、むくみが改善されることもあります。

あまりにむくみがひどいようなら、まずは弾性ストッキングを使用して見ながら、経過によって他の治療方法もドクターと相談してみましょう。

血栓性静脈炎

静脈にできた血栓が原因で静脈に炎症が起こっているものを「血栓性静脈炎」と呼びます。発症すると痛みだけでなく、皮膚の赤みや腫れなどの症状も引き起こされるのが特徴です。

下肢静脈瘤の症状が悪化した段階で生じることがあり、放置していれば治ることはあまりありません。

放っておくと詰まった血栓が他の部位に流れて肺塞栓などを起こすこともあるため、できるだけ早めに医師に相談しましょう。

【血栓性静脈炎】おもに表在静脈の血栓による静脈炎をいう(深部静脈に生じるものは深部静脈血栓症として区別する).

バージャー病,ベーチェット病,凝固線溶系異常,血小板増多症,悪性腫瘍などに合併して生じるが,下肢では静脈うっ滞に伴い生じるものが多い.

上肢では静脈注射など医原性が多い

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記事監修医師紹介

成田亜希子 医師

成田亜希子医師
  • 専門とする科目:日本内科学会、日本公衆衛生学会、日本感染症学会、日本結核病学会、日本健康教育学会所属
  • 経歴:弘前大学医学部卒
  • プロフィール:東京都出身。国立医療科学院や結核研究所で研修を積み、保健所勤務経験から感染症、医療行政に詳しい。
※学術部分のみの監修となり、医師が具体的なクリニックや施術や商品等を推奨しているものではございません。

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