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下肢静脈瘤の種類

こちらでは、伏在静脈瘤、側枝静脈瘤、網目状静脈瘤、クモの巣状静脈瘤の4つの静脈瘤について、症状や治療方法を説明します。

目 次

伏在型静脈瘤
(ふくざいがたじょうみゃくりゅう)

伏在静脈とは、足の付け根と膝の裏で深部静脈に合流する太めの静脈。

伏在静脈瘤は、伏在静脈の静脈弁が壊れて血液が逆流し、ふくらはぎのまわり、むこうずねのまわり、膝のまわり、太ももの内側などで血管が拡張して浮き上がり、0.5~3cm程度のコブ状になったものです。

伏在静脈は典型的な下肢静脈瘤のタイプで、大伏在静脈瘤と小伏在静脈瘤があります。

大伏在静脈瘤(だいふくざいじょうみゃくりゅう)

足首の内側、下肢の内側を通り、脚の付け根まで上がっていく大伏在静脈に出来る静脈瘤です。

大伏在静脈瘤の治療は、血管内レーザー焼却術やレーザー焼却術と硬化療法を組み合わせた治療やストリッピング手術、内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術などが一般的です。

血管内レーザー焼却術は、手術跡がほとんど残らず、保険適用になっていることなどからオススメの治療ですが、手術をするドクターの腕や設備によっては静脈瘤そのものを切除するケースもあります。

大伏在静脈瘤に対する治療として,高位結紮術併用硬化療法,ストリッピング手術,本幹硬化療法などが行わ れ,2011年1月には血管内レーザー治療(ELVeSTMレーザー)が保険適用となり,新たな選択肢となった.

従来行われてきた大伏在静脈高位結紮術は,低侵襲ではあるが,遠隔期には大伏在静脈本幹の開存,逆流による再発率が高く,高位結紮術とストリッピング手術を比較した検討において,前者の再発率が有意に高いことが報告されている。

また、最大径10mm以下の大伏在静脈瘤に血管内レーザー焼却術治療を行った300肢の症例の後ろ向き検討では、98.7%が成功。

66%が血管内レーザー焼却術のみで治療ができるという研究報告も発表されています[1]。

大伏在静脈瘤では、まれに大伏在静脈瘤本幹血栓性静脈炎が起こる場合があります。静脈瘤から血栓が生じると、瘤の部分が赤く腫れ上がります。

命には問題ないものの、炎症が強く、鎮痛剤などでの治療が行われることとなります。

小伏在静脈瘤(しょうふくざいがたじょうみゃくりゅう)

足首の外側、下腿の背側を通り、膝窩部(しっかぶ:膝の裏のくぼんだところ)まで上がっていく小伏在静脈に出来る静脈瘤です。

下肢静脈瘤の手術を行っている「心臓血管センター金沢循環器病院心臓血管外科」では2001年1月から2010年末までに行った下肢静脈瘤の手術のうち、小伏在静脈瘤のみの手術を行った割合は約2割と報告されています。

静脈瘤ができる部分はとても狭く、腓腹(ふくらはぎ)が膨らんだり、鈍痛が生じたり、けいれんが出るなどの症状が出る場合があります。

ただ、治療は小伏在静脈と膝窩の接合部を離したり、小伏在静脈瘤を取ったりする手術で治療が可能です。

原因や症例にはいろいろなバリエーションがあるため、症例にあった治療方法を選んでいくことが大切です。

当院では 2001年 1月より2010 年末までに218 例の下肢静脈瘤手術を行ってきた.このうち,小伏在静脈瘤のみに対する手術施行例は 44 例(45 肢)で 20.6%であった.

これら症例は夕方になると腓腹筋部の硬直,けいれん,疼痛を訴えており,小伏 在静脈抜去で治癒している.

従来小伏在静脈は腓腹部を上行し膝窩静脈に流入してお り,この接合部弁不全による逆流が腓腹筋に静脈うっ血を来し症状を発現すると考えられている.

このため,この接合部の結紮・切離と腓腹筋中央部にある穿通枝との間,あるいは足関節 腓骨側枝間の抜去で治癒しうると考えられてきた1) .

一般的に小伏在静脈が膝窩静脈に流入する部は単純には 2 ないし 4 本の内外分枝があるのみと理解されているが,実際には多くの破格があることが気付かれ,Bergans は同部位を Poplitealvein area と記している4).

Williams は 1 本の膝窩静脈は 26%で,66%は 2 本の膝窩静脈があり,多くの静脈枝は腓骨筋や腓腹筋静脈からの枝であり,これらの枝は直接膝窩部静脈に流入していることもあると述べ,筋膜切開し,その下部の小伏在静脈との連絡を確認することが大切と述べている

側枝型静脈瘤(そくしがたじょうみゃくりゅう)

伏在静脈の枝部分の静脈弁が壊れて血液がたまってできた静脈瘤で、伏在静脈から枝分かれした先の部分にできたものです。膝から下の部分に出来ることが多いとされます。

伏在静脈瘤が表在静脈で最も太い血管であるのに対し、側枝静脈はその次に太い静脈です。

静脈瘤の症例としては伏在静脈瘤が多いものの、伏在静脈瘤と合わせて側枝静脈瘤を併発しているケースもあります。

伏在静脈瘤に側枝静脈瘤が併発している場合、静脈瘤の大きさに応じで瘤の切除をするかしないかを決めます。

伏在静脈瘤の手術を行っただけでも、側枝静脈瘤が小さくなるケースも多く、側枝静脈瘤の治療は伏在静脈瘤の改善だけでも大いに効果があると考えられます。

静脈高血圧によって拡張・蛇行した下腿の側枝静脈が,不全のある伏在静脈本幹の治療で縮小すること4)や出産後の静脈圧の低下によって径や形態が正常化すること5)は以前から知られている.

したがって,伏在型静脈瘤において伏在静脈本幹の逆流を阻止するだけでも側枝静脈瘤が縮小し,追加治療が不必要になる可能性が示唆される.

Schanzer は 76 名 86 肢の伏在型静脈瘤に EVLAを施行し,術後 1 カ月目の時点で側枝静脈瘤が完全に縮小したのが 36 肢(41.8%),部分縮小が 48 肢(55.8%),変化なしが 2 肢(2.3%)で,部分縮小症例のうち 36 肢(41.8%)で 2 期的な側枝静脈瘤の治療が必要であり,そのうち 23 肢(26.7%)に瘤切除あるいは硬化療法による追加療法を施行したと報告している6)

側枝静脈瘤になりやすい方としては、立ち仕事が多い方や妊娠中の方、家族に下肢静脈瘤になった人がいる方などが挙げられます。

側枝静脈瘤は、一次性であれば命に危険があったり足の切断が必要になる程悪化することはありません。

ただ、症状として、炎症による痛み・かゆみ・見た目が悪い・血栓症の併発、足のむくみ、足のつり、脚が重い/だるいなどが挙げられます。

また、血管が浮き上がって見えるだけで症状は特にない場合もあります。静脈瘤が自然破裂すれば皮下出血し、瘤周辺があざのように見えることも。

また、痒くて引っ掻いてしまえば、引っ掻いた部分が化膿性の炎症を引き起こすケースもありえます。

皮膚炎や色素沈着は下肢静脈瘤の合併症として位置付けられます。色素沈着をした状態は10症例。

皮膚潰瘍ができてしまえば、元の状態に戻すのは難しいですし、色素沈着も改善までに時間が何年もかかります。

手術以外にも治療法としては弾性ストッキングの着用などもありますので、まずは気軽にクリニックなどで相談してみるといいでしょう。

網目状静脈瘤(あみめじょうじょうみゃくりゅう)

皮膚直下の小さい静脈が拡張した2~3mmの静脈瘤。青色で網の目状に広がり、脚全体に広がることもあります。

下肢静脈瘤の診療ガイドラインでは、網目状静脈瘤の定義は2から3mmの太さの静脈が青く網目状に広がっていることとされています。

真皮下に広がる網目状静脈瘤と、クモの巣状静脈瘤との違いは、その太さで、網目状静脈瘤よりも細い0.1から1mm以下の静脈瘤を指します。

一次性静脈瘤の中では、治療が必要なケースが一番多い伏在型静脈瘤に対して、網目状静脈瘤は側枝静脈瘤やクモの巣静脈瘤と合わせて「小静脈瘤」とまとめて言われることがあります。

網目状静脈瘤の見た目が網目状なことから、網目状静脈瘤と呼ばれます。

網目状静脈瘤の治療は、レーザー治療などが考えられますが、レーザー治療ではなかなか静脈瘤が完全には無くなりません。

そのため、原因となっている伏在静脈の逆流を治療した後に、硬化療法などで追加治療するケースもあります。

基本的に網目状静脈瘤自体は手術の必要はなく、硬化療法や弾性ストッキングのみでの治療で済む軽症の静脈瘤です。

どうしても外観が気になる場合には、硬化療法や、保険適応外となりますが、レーザー治療な どが検討できます。

網目状静脈瘤やクモの巣状静脈瘤のように径が小さく蛇行したり複雑な形をした静脈瘤に、近赤外線バスキュラーイメージング機器などを使った可視化硬化療法が用いられることもあります。

さて,網目状静脈瘤は,径 1~3 mm 未満で真皮下の皮内に拡張した静脈瘤をいい,クモの巣状静脈瘤は,真皮内の 1 mm 以下の細静脈瘤と定義されている.

とりわけ,クモの巣状静脈瘤は,直視下に 30 G 針を用いて硬化剤を注入するには,相当な習熟を要し,よしんば注入し得ても,細い静脈内腔が硬化剤に反応して閉塞すると,血管外の組織にもれてしまう.

クモの巣状静脈瘤の周囲を LEDランプで透視すると,しだれ桜の要(カナメ)のような部分の真皮下に feeding reticular vein ともいうべき 1~3 mm の静脈を見出すことができる.

このツボに透過光下で,針を刺入することは比較的容易であり,逆流ポイントを閉塞することで末梢のクモの巣状静脈瘤を消失させることも可能になった.

下肢静脈瘤硬化療法に光を求めて,たどり着いた可視化硬化療法は,リアルタイムに硬化剤の広がりを観察しながら治療ができるので,適切な治療部位に適量の薬液を注入することが可能になった.

とくに皮膚表面からは直視できない複雑な走行を示す網目状あるいはクモの巣状静脈瘤には,極めて有効である.

レーザー治療のあとに,消えきらない下腿の残存静脈瘤にも可視化硬化療法は,安全に行えるので,是非,足の付け根から足趾まで,丁寧に,きれいに,確実に静脈瘤を根治されることを願っている

クモの巣状静脈瘤(くものすじょうじょうみゃくりゅう)

網目状より細い0.1~1mm真皮内静脈にできる静脈瘤で、赤紫色で盛り上がりがありません。網目静脈瘤やクモの巣状静脈瘤は、欧米に多いタイプの静脈瘤です。

クモの巣状静脈瘤は、基本的に網目状静脈瘤と同様に考えればいいでしょう。大きな違いは、クモの巣状静脈瘤は直径1mm以下の細い静脈瘤で、瘤というよりは、細い薄紅色の血管が皮膚から見えるのが特徴です。

伏在型静脈瘤や側枝静脈瘤、網目状静脈瘤などと一緒に現れることもあります。

網目状と同じく、比較的軽症の部類に分類されるクモの巣状静脈瘤。基本的には手術治療の必要はありません。弾性ストッキングや硬化療法などでの治療となります。

ただし、慢性静脈不全症と言って下肢のだるさやむくみ、湿疹などが生じるようなケースではきちんと治療を行わないと悪化する恐れもあるので速やかに病院を受診しましょう。

【慢性静脈不全症(chronic venous insufficiency:CVI)】または,chronic venous disorders:CVD.慢性静脈不全症とは「何らかの原因で,心臓への静脈還流が障害された結果,下肢のだるさ・浮腫・腫脹・疼痛・二次性静脈瘤・湿疹・皮膚硬化・潰瘍等が現れてくる病気」と定義されている.

深部静脈血栓症後遺症や下肢静脈瘤の未治療で生じる下肢静脈高血圧状態が持続しているために生じる.

CEAP 分類に従って 明確に分類し治療方針を決めることがすすめられる.

【静脈瘤性症候群】または,うっ滞性症候群.下肢静脈うっ滞によって引き起こされる症状(足から下腿の浮腫・倦怠疲労感,うっ滞性湿疹・紫斑,色素沈着,ヘモジデリン沈着,白色萎縮,下腿潰瘍など)として扱われている名称である.

これに含まれる病態の主な原因には,一次性下肢静脈瘤の未治療放置例と深部静脈血栓症後遺症がある.

この 2 つは治療法が異なり,前者は原因である下肢静脈瘤の手術治療を行うべきで,後者は厳格な圧迫療法など保存的療法を継続しなければならない.

下肢静脈瘤の治療方法

下肢静脈瘤の治療には以下のようなものがあります。

静脈瘤の種類によって治療法も異なってきますので、お近くの血管外科などに相談することをおすすめします。

  • 圧迫療法:医療用弾性ストッキングで足に圧力を適度に与え、血液がたまらないようにし、静脈の流れをサポートする。
  • 硬化療法:血管を固める硬化剤を静脈に注射し、弾性包帯で圧迫して血管をつぶす。
  • ストリッピング手術:手術で弁不全を起こしている静脈を引き抜く。根治的治療法として古くから行われている。
  • レーザー治療:静脈内にレーザーを照射して血管内壁を焼き静脈瘤内腔を塞ぐ。
  • 高周波治療:静脈内に高周波(ラジオ波)を照射して血管内壁を焼き静脈瘤内腔を塞ぐ。
  • グルー治療:血管の中にカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、そこからグルーと呼ばれる医療用接着剤を注入。
  • 高位結紮術:脚の付け根部分の血管を縛って、血液が逆流するのを食い止める方法。

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記事監修医師紹介

成田亜希子 医師

成田亜希子医師
  • 専門とする科目:日本内科学会、日本公衆衛生学会、日本感染症学会、日本結核病学会、日本健康教育学会所属
  • 経歴:弘前大学医学部卒
  • プロフィール:東京都出身。国立医療科学院や結核研究所で研修を積み、保健所勤務経験から感染症、医療行政に詳しい。
※学術部分のみの監修となり、医師が具体的なクリニックや施術や商品等を推奨しているものではございません。