公開日: |更新日:

下肢静脈瘤の合併症・後遺症

下肢静脈瘤の手術は、術後の合併症や後遺症などのリスクはあるのでしょうか?

手術をする前に知っておきたい術後の後遺症や合併症のリスクについて調べてみました。

目 次

下肢静脈瘤の治療別に見る合併症・後遺症

ストリッピング手術

ストリッピング手術は、静脈内で弁不全を起こした部分をストリッパーという器具を使って引き抜く手術。

下肢静脈瘤の手術においてもっとも古くから行われている治療であり、また根本的な治療が可能です。

ストリッピング手術後に考えられる後遺症としては、しびれなどの「神経障害」が挙げられます。

ストリッピング手術の合併症としては、他の手術と同様に、手術によってできた傷から感染症や出血を起こす可能性があります。

一方、考えられる後遺症としては、しびれなどの「神経障害」が挙げられます。

これは、血管を引き抜く際に神経にダメージを与えてしまう・触れてしまうことで起こる後遺症ですが、数日でしびれは治まることがほとんどです。重篤な神経障害が後遺症として残るリスクは決して高くありません。

血管内焼灼術

血管内にカテーテルを挿入して、レーザーや高周波のエネルギーによって静脈の壁を焼き、静脈瘤を圧迫する治療方法です。そのため、治療によって痛みが生じることが多く、やけどや神経障害、重症な場合には深部静脈血栓症が発生する危険があります。

血栓ができる可能性は非常に低いのですが、血栓が肺動脈に詰まって肺塞栓症を起こすこともあります。

肺塞栓症は命に関わる合併症でもあるため、術後の過ごし方や弾性ストッキングの着用などは医師の指示に従うことが重要です。

合併症「深部静脈血栓症」とは

血管内焼灼術の合併症として挙げられるのが、深部静脈血栓症です。

これは血管内焼灼術によって血液が凝固することにより、静脈に血栓ができてしまう症状で、血栓が血管を通して肺の動脈を詰まらせる「肺塞栓症」を引き起こすこともあります。

とはいえ、深部静脈血栓症を引き起こすケースは2011~2013年の4万件以上に対する調査で0.076%と報告されているため、過度な心配は必要ありません。

深部静脈血栓症を発症した場合は、血栓を除去する治療を行いますが、手術後の経過観察をしっかり行うことが重要です。

硬化療法

硬化療法は、患部に注射をして硬化剤を注入し、弾性ストッキングを着用して圧迫することで静脈瘤を閉塞させる治療です。

硬化療法の合併症としては、血管内焼灼術同様に深部静脈血栓症が挙げられます。

また、後遺症としては、治療を行った部分にしこりや色素沈着を残すことが挙げられます。

これらの症状は、血管が消滅するまで残るため、見た目を気にする人は十分納得した上で治療を受ける必要があります。

また、硬化療法で治療をしても再発してしまうこともあり、治療を繰り返す必要があるケースも少なくありません。

高位結紮術

局所麻酔で脚の付け根を切開して行われる結紮術は、下肢静脈瘤の外科的治療方法の一つです。切開部分が小さいことから日帰りでできる手術ですが、再発率が高く、新たな治療法の開発により、現在ではあまり行われなくなっています。

合併症としては、神経障害や感染症などが挙げられます。

手術後の合併症のリスクを考えた
下肢静脈瘤のグルー治療について
詳しく見る

手術後の合併症や後遺症のリスクを下げるために

下肢静脈瘤の治療法は、合併症や後遺症が発生するリスクのあるものです。ただ、その頻度は少ないとされています。

ただし、手術後に自己判断で弾性ストッキングの着用を止めてしまった場合などは重篤な合併症を起こすこともあるため注意が必要です。

合併症や後遺症のリスクを減らすためには、きちんと術後の診察を受け、医師の指示に従うことが第一です。

下肢静脈瘤の治療を開始する前に、それぞれの治療法のリスクを知り、手術後の生活に支障がないかどうかもあわせて検討しておきましょう。

下肢静脈瘤手術後の注意点

手術の内容や病院の方針、仕事内容や運動の種類などによっても可能な範囲は異なりますので、手術を受ける際には必ず医師に相談するようにしてください。

仕事は今まで通り可能?

下肢静脈瘤手術後は、日常的に行える家事(料理・洗濯・買い物等)や座って行えるデスクワーク、事務作業などは手術の翌日から可能です。

立ち仕事の場合は、手術後3日目くらいから可能になりますが、あまり長時間立ちっぱなしにならないよう、休憩を入れたり勤務時間を短くしたりしたほうがいいでしょう。

手術後1週間ほどすれば今まで通りの立ち仕事も可能になりますが、それまではあまり無理をしないようにしてください。

立ちっぱなしにならないよう、時々歩いて足を動かすようにしたほうがしましょう。

また、座り仕事でも座りっぱなしはよくないので、時々足を上げたりマッサージをしたりして、血流を促すようにするのも効果的です。

運動をしても平気?

下肢静脈瘤の手術後は、軽い体操や散歩、ウォーキングなどの日常的に行う運動なら手術の翌日から行っても問題ありません。

日帰りの手術の場合は、手術後そのまま歩いて帰ることもできますし、車の運転も可能です。

術後1~2週間ほどすれば運動することも可能になります。

ただし、ストリッピング治療や足の静脈瘤を切除する手術の場合は、なるべく1ヶ月くらいは激しい運動は控えた方がいいでしょう。

スポーツなどをする人は、具体的にいつ頃から可能か必ず医師に確認するようにしましょう。

食事や飲酒で気を付けることは?

下肢静脈瘤手術後は、特に食事で禁止されていることはありません。

ただ、手術後すぐにお酒を飲むと痛みが強くなりやすく、脱水症状を起こすことで深部静脈血栓症を引き起こしやすくなるため、医師が許可を出すまでは飲酒を控えるようにしましょう。

日常生活に支障はないの?

下肢静脈瘤手術は日帰り手術もあり、手術後はそのまま自分で歩いて帰れるので、手術のために何日間も要することはありません。

ただ、入院が必要なストリッピング手術の場合は、日常生活に戻るまで2週間から1ヶ月程度かかる場合もあります。

日帰り手術の場合は、手術の翌日からシャワーを浴びることが可能で、3日から1週間ほどすれば入浴できるようになります。

日常的に行う家事や座って行う作業なら翌日から開始できるので、日常生活にそれほど支障はないでしょう。

手術後すぐは激しい運動はできませんが、あまり動かないでいると深部静脈血栓症を起こしやすくなるので、適度に動いたほうがいいとされています。

手術後も経過を見るために何度か通院する必要はありますが、医師の指示をきちんと聞いて適切な処置をすることで術後のリスクを下げることにつながります。

合併症かも?後遺症かも?と思ったら

下肢静脈瘤手術をした場合、術後に合併症が出る可能性や後遺症が残る可能性は高くありませんが、ゼロとも言えません。

もし手術後に異常を感じた場合には、すぐに医師に相談するようにしましょう。

手術後すぐは、多少の痛みや出血、腫れなどがありますが、もらった鎮痛剤を飲んでも痛みが引かない、出血や腫れがひどいという場合には、術後の診察を待たずに病院で診察を受けるようにしてください。

また、手術後はどの場合でも経過を見る診察がありますので、必ず受診しましょう。

病院によって1週間後、1か月後、3か月後など頻度は異なりますが、気になることはその時に相談するのもいいでしょう。

大阪で下肢静脈瘤が治療できる
おすすめのクリニック4選を見る

記事監修医師紹介

成田亜希子 医師

成田亜希子医師
  • 専門とする科目:日本内科学会、日本公衆衛生学会、日本感染症学会、日本結核病学会、日本健康教育学会所属
  • 経歴:弘前大学医学部卒
  • プロフィール:東京都出身。国立医療科学院や結核研究所で研修を積み、保健所勤務経験から感染症、医療行政に詳しい。
※学術部分のみの監修となり、医師が具体的なクリニックや施術や商品等を推奨しているものではございません。

記事作成の参考にしたサイト

血管内レーザー焼灼術導入後の下肢静脈瘤手術治療−下肢静脈瘤手術治療のリスクは本当に低いのか?−[PDF]