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下肢静脈瘤と深部静脈血栓症の関係
下肢静脈瘤になりやすい人は、血液が脚に溜まりやすくなるため、長時間座った状態が続くなど、状況によっては深部静脈血栓症を引き起こすことがあるため注意が必要です。
下肢静脈瘤と深部静脈血栓症との関係を考えてみましょう。
深部静脈血栓症とは
深部静脈血栓症とは、体の深部の静脈に血栓ができる病気で、主にふくらはぎや太もも、骨盤周囲の血管に発症します。
もしかしたら「エコノミークラス症候群」という名前の方がピンとくる方も多いかもしれません。
静脈にできた血栓が脳や肺に移動してしまえば、脳梗塞や肺梗塞など命に関わる病気を引き起こす可能性あるため、深部静脈血栓症はとても危険な病気といわれています。
そのため、早期発見・早期治療が大切な病気の一つでもあります。
下肢静脈瘤の人は深部静脈血栓症になりやすい?
下肢静脈瘤が深部静脈血栓症のリスクになる可能性はありますが、必ずしも下肢静脈瘤が深部静脈血栓症を引き起こすかとは言い切れません。
下肢静脈瘤の人は脚に血液が停滞しやすいため、特にがん治療中の方、静脈血栓塞栓症の発症経験のある方、ギプスなどで下肢を固定している方、長時間座ったままの方など、他の深部静脈血栓症の発症リスクを高める要因がある方は、下肢静脈瘤の症状が出たら、早めに医師に相談してみましょう。
深部静脈血栓症の発症後、下肢静脈瘤ができることも
また、逆に下肢静脈瘤の病因は、下肢静脈の弁不全以外にも、深部静脈血栓症が原因となることもあります。
下肢静脈瘤によって深部静脈血栓症になりやすくなることもあれば逆もありうるということは頭に入れておいた方がいいかもしれませんね。
深部静脈血栓症と下肢静脈瘤の関係
日本静脈学会が作成している「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン」では、深部静脈血栓症の危険因子として次のような因子が指摘されています。
静脈血栓塞栓症の危険因子
- 血流の停滞
- 血管内皮障害
- 血液凝固亢進障害
この「血流の停滞」としての一つとして下肢静脈瘤も挙げられています。
決して強い危険因子ではありませんが、下肢静脈瘤が深部静脈血栓症の引き金となる可能性があるのは確かなことと考えられているのです。
血流の停滞を引き起こす下肢静脈瘤
では一体、どうして下肢静脈瘤が深部静脈血栓症を引き起こすリスクとされているのでしょうか?
先程ご紹介したガイドラインによれば、静脈血栓塞栓症の原因は、静脈の内皮障害、血液の凝固亢進、静脈の血流停滞の3つが考えられます。
静脈の血管にある弁が何らかの原因により壊れてしまい、血管に血液が溜まりコブのような状態になる下肢静脈瘤は、静脈内に圧力がかかり、血液が脚にたまる状態を引き起こします。
下肢静脈瘤は、血液が停滞する状態を引き起こしますが、それだけでは深部静脈血栓症の原因とはなりません。
下肢静脈瘤によって血液が停滞し、何らかの原因で血管の内皮に障害ができたり凝固が亢進されたりした場合に引き起こされるとされています。
記事監修医師紹介
成田亜希子 医師

- 専門とする科目:日本内科学会、日本公衆衛生学会、日本感染症学会、日本結核病学会、日本健康教育学会所属
- 経歴:弘前大学医学部卒
- プロフィール:東京都出身。国立医療科学院や結核研究所で研修を積み、保健所勤務経験から感染症、医療行政に詳しい。
※学術部分のみの監修となり、医師が具体的なクリニックや施術や商品等を推奨しているものではございません。